娘が買った本で、「まだ読む時間がないので先に読めば」と貸してくれました。今日の通院の順番待ちの時に読みだして、寝る前には読み終えました。
ある田舎町で、大量のドーナツに囲まれて女性(吉良有羽)が自殺したというところから始まります。美容クリニックの院長である橘久乃と相手との会話の形で有羽の自殺の理由を明らかにしていくというストーリーです。その会話は、相手の話す内容のみで、時折打つ久乃の相槌や質問は、相手の話す内容の中での繰り返しという形になっていて、これは久乃と相手のどちらが言ったことなのかわかり難い表現になっています。
話をする相手は、8人。それが7章にわかれていて、その前後にプロローグとエピローグとして、久乃の討論番組と講演で久乃が話した内容が書かれているという構成です。
第一章「ロック・ジュウヨン」 結城志保 【久乃の同級生】
第二章「ドーナツの真ん中」 如月アミ 【有羽の同級生・久乃の後輩】
第三章「似たもの親子」 堀口星夜 【有羽の同級生・弦多の息子】、堀口弦多 【久乃の同級生】
第四章「道徳とか、倫理とか」 結城希恵 【志保の妹・有羽の中学の担任】
第五章「あまいささやき」 柴山登紀子 【有羽の高校の担任】
第六章「あこがれの人」 横網(吉良)八重子 【久乃の同級生・有羽の母】
第七章「あるものないもの」 吉良有羽、横網(吉良)八重子
この小説で感じることはいろいろとあります。外見で人を判断することによる差別・イジメ、周りの人間への烏合、狭い観点や自分の価値判断での他人への干渉、人の心の中を測ることことや理解し合うことの難しさ、などなど。有羽の自殺の真相は、あまりにも切なく悲しい結末で、母への非難を無くすためにしたことを受け入れられると思っていたのに、まさかの母の行動、その時の心境を考えればとてつもない絶望を持ってしまったことは、容易に想像できます。いろんな人の言動が有羽を追い詰めていったわけですが、それには有羽に対しての悪意があったものが無かったのも、人が人に対する評価・判断・行動の難しさを感じます。
この作品で言いたいことは、久乃の言葉として最後にまとめられています。それをここに抜粋しておこうと思います。
人が笑ってるから私も笑う等のように、人を判断したりする基準を他者に委ねないで。人はジグソーパズルのピースのようにそれぞれに似ているようで少しずつ違うへこみやでっぱりがある。それは外見だけでなく内面も含めてピースの形に現れる。長所があり短所があり、好きなものがあり、苦手なものがある。そうやって自分というカケラができあがる。カケラとカケラがはまって家族ができ、町ができ、一枚の絵の一片となる。だけど、皆のカケラがその絵にうまくはまるとは限らない。学校という名の絵、会社とう名の絵、無理に押し込もうとすると崩れてしまう。自分の居場所はないのかもしれないと思う。そしてそれに悩み自分の形を変えようと思ってしまう。しかし、皆が同じ形になれば、絵は作りやすい。しかしそんなパズルつまらないと思いませんか。出来上がった絵もつまらなそうじゃないですか。自分の作りたい絵にたいしては不自然に思えるピースでも、そのピースでもそのピースがピタリとはまる場所は必ずある。あなたというカケラがぴったりはまる場所は、必ずあるから。
娘が選んだ本ですが、娘に何か伝わればいいなぁと思ういい作品でした。

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。


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