映画「劇場版 アナウンサーたちの戦争」

昨年8月14日に、NHKスペシャルで放映されたドラマの映画版です。ドラマのほうは観ていませんので、ドラマと映画の違いはわかりません。戦時中のアナウンサーの苦悩みたいなものが予告やフライヤーで感じましたので、これは観ておかないといけないという思いで観てきました。

人気のラジオアナウンサー・和田(森田剛)と信心アナウンサーの館野(高良健吾)は、開戦時に国民を熱狂させ、各地の勝利を国民に伝え続けた。しかし、和田はその大本営発表の内容が真実なのかどうかに疑問を持ち始め、学徒動員で出兵する学生と話をして自分たちがしてきたことによって若者を死に向かわせていることに悩む。館野も電波戦のために赴任した海外の前線で戦争の実態を知り、自分がやってきたことに疑問を持つ・・・というストーリーです。

本来は真実を伝えるべき放送従事者が、その内容の真実を疑わずに戦争に対する国民の士気高揚に加担し、電波戦と称し偽情報をわざと流して敵をかく乱したりします。最初はそれが国のためだという信念で行動するのですが、やがてそれが間違っているのではないかという後悔や苦悩はよく表現されていたと思います。学徒動員の本音を聞くシーンや、残された家族の話を聞くシーンでは、ジーンとして泣きそうになりました。

こういう映画を観ると、国民を巻き込んで若い大事な命をとても軽く死に追いやった責任は政府や軍の上層部だけにあるのかと考えさせられます。もちろん、侵略という目的で戦争を始めたこと自体が元凶であり、そういう意味では戦争の責任は上層部にあることに疑いの余地はないのですが、それを後押ししてしまったということでは、いろんな人にいろんな後悔を残した戦争だったのだなと思います。今の放送関係者に、その教訓はしっかりと根付いているのでしょうか。

人間は愚かで過ちを繰り返すもの。こういう映画を観たりして日本が経験した戦争の実態を次の世代にしっかりと伝えていく必要があると感じました。

ただ、テーマはいいのですが、映画としての作りは、時間軸がわかり難く動いたり、シーンのつながりがバタバタした感じがあったり、苦悩の広がりに滑らかさがなかったり、戦時中のシーンなのに現代人に見えたり、当時の再現された街もあまりリアル感がなかったり、映画ならではの構成や重みやリアル感がちょっと足りない感じがしました。

テレビドラマとして再放送して、たくさんの人に観てもらうという選択のほうがいい映画かなというのが正直な感想です。

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。

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