「レモンと殺人鬼」が面白かったので、薬師丸ひろ子と伊藤蘭のコンサートの開場待ちの時間を利用して「くわがきあゆ」の次作であるこの作品を読んでみました。「このミス」大賞・文庫グランプリ受賞作です。
日羽光と森岡颯一は、一緒にいる時に古民家カフェの崩壊事故に巻き込まれ、颯一は亡くなってしまいます。光は、そこで颯一の治療をしてくれなかった医療従事者らしき男性二人に対して、なぜ彼らが颯一を助けてくれなかったのかを知りたくて二人を捜します。その一人が市民病院医師の黒田であるということを突き止め会いに行きますが、目の前で黒田は銃殺されます。黒田の葬儀で、もう一人の証券会社の営業員・薬師は、光が自分たちを捜していることを知り、薬師も光に興味を持ち調べ始める、というストーリーです。
光は、純粋に恋人を見殺しにした男たちを突き止めて復讐をする、という流れで読み進めるのですが、途中から光の闇や異常性が、薬師の調査によって明らかにされていきます。一方、薬師の存在を知った光の調査によって、薬師の異常性も明らかになってきます。単純な復讐の話ではないことがわかってきて、結末がまったく予想できない状況になっていきます。誰が正義で誰が悪なのかというような単純な構造ではありません。この二人の異常性によって二人のまわりには光と薬師を憎む人たちがたくさんいて、そういう意味で復讐の泥沼の様相になっていきます。結末は意外性があって小説としては面白かったと思える読後感を得られますが、結末は重苦しくて共感などひとかけらも無くて、スッキリした爽快感や納得感はありません。サイコサスペンスと表現されていますが、まったくその通りです。人はどこかひとつ頭のネジが緩んでいるとこういう人間ができあがるのかと、そういう怖さも感じます。
この作品は、読み始めると次々に読み進めたくなる面白い作品でした。映画にしても面白そうです。



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