公開前から、私も奥さんも面白そうと思っていた映画です。
江戸時代の人気作家・滝沢馬琴(役所広司)が友人の絵師・葛飾北斎(内野聖陽)に八犬伝の構想を語るところから始まり、28年の歳月を費やして八犬伝が完成するまでの物語です。馬琴の構想に合わせて、八犬伝のその内容が挿入されるという構成となっています。
馬琴とその家族、友人の北斎の物語の実の世界と、馬琴の構想に合わせて八犬伝という物語の虚の世界が交互に描かれるのですが、冗長なところはまったくなくその物語に引き込まれて、2時間半という時間があっという間でした。
実の世界の物語は、馬琴の生活での妻と子との関係と、物語執筆で考える世の中の正義と悪について考えさせられる内容でした。馬琴と北斎の関係はコミカルな会話もあって笑みも出ますが、父親の厳しい育て方に対して素直に健気に育つ息子・宗伯(磯村勇斗)の姿は私の娘たちとの関係と重なり泣けてきました。また、物書きに没頭して妻に文句ばかり言われていた馬琴が、妻の墓の前で「俺と一緒になって幸せだったのか」とつぶやくシーンも自分と重なり考えさせられました。また、ちょうど衆議院議員総選挙のあとだったので、「物語は正義が勝つが現実は悪が勝って蔓延る」という考え方も頷けるものがありました。
虚の世界の八犬伝の物語のシーンは、構成上、かなり端折ったストーリーとなっています。しかし、ポイントはちゃんとと押さえられているし、映像は大迫力でとても見ごたえがありました。一緒に観た長女は八犬伝自体をよく知らなかったのですが、この映画で興味を持って本を読みたくなったと言っていました。そう思えるほど、八犬伝の物語自体も魅力的に描かれていました。
八犬伝を書き上げた馬琴のもとに八剣士が現れて、実と虚の世界がひとつになるというイメージのラストシーンは、なんか感動的で、私も奥さんも泣いてしまっていました。
想像していた以上に伝わってくるものが多くて素晴らしい映画でした。

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。


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