小説「有限会社さんず スーサイド・サポート・サービス」

長女と書店に行ってふたりで文庫本を物色している時に、面白そうだねと見つけたものです。

自殺を考えている人の前に2次元コードが書かれた名刺大の紙が届けられます。その2次元コードでアクセスできるサイトは、自殺幇助業者「有限会社さんず」。自殺幇助を申し込むとやってくるのはスガとカトウという2人組。ふたりと5人の自殺希望者の物語が展開されます。

第一話 コンビニエンスパーソン(コンビニ店長)
第二話 最愛のあなた(政治家秘書)
第三話 蝶の男(蝶のコレクター)
第四話 思い出の味(居酒屋経営者)
第五話 声(女性教師)

面白そうと思った通り、とても面白い内容でした。自殺幇助業者という設定も面白いし、スガとカトウというふたりのキャラクターも魅力的です。 自殺幇助業者の目的は、ある上流階級の人間に楽しみを提供するという悪趣味なものですが、スガとカトウは、いろんな自殺志願者に出会い、身内の自殺と重ねることで、考えを変化させていくというストーリーです。なので、自殺幇助業者といっても自殺を勧めるような内容ではなくて、スガとカトウが、自殺の理由や自殺に踏み切れない理由などを聞いて、なぜそんなことになったのかという人生模様や心の真実を明らかにしていくという内容になっています。第四話でスガの心に変化が芽生え、第五話でスガの姉の自殺の理由と「さんず」に入った理由が明らかになり、そんなスガを見てカトウも自分の妻の自殺に向き合うことによって、「さんず」に初めて反抗します。ラストシーンは、「さんず」の自殺願望者を見つける情報網を自殺を思い留めさせることに使えないかとふたりが語るところで終わります。

人生、死にたいと思うほど辛かったり絶望を感じたりすることは少なくありません。そんな時、心を病んで躊躇いもなく行動を起こす人もいれば、その行動に踏みけれずに悩んでいる人も多いです。後者の人は、話を聞いたりすることによって、その行動を止めることができるのかもしれません。スガもカトウだけでなく、読み手もそういう期待を持ちたいと思わせてくれる作品でした。

この作品は、ドラマ化されれば面白いだろうと思いました。いつか本質を曲げない形でドラマ化されることを期待し楽しみにしたいと思います。トラベルナースではありませんが、スガが岡田将生、カトウが中井貴一なんて、ぴったりだと思いました。いろんな人の人間模様が描かれて、社会への問題提起も含まれたとても奥深い良い作品でした。

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。

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