「眼球堂の殺人」が面白かったので、堂シリーズ第2弾である「双孔堂の殺人」を読んでみました。
「双孔堂の殺人」は、謎解きは「眼球堂の殺人」と同じく数学者・十和田只人が中心ですが、主人公は、警察庁警視・宮司司となっています。宮司の妹・百合子は十和田の大ファンであり、十和田が「ダブル・トーラス」という建物にいるという情報を得て、兄の宮司に十和田のサインをもらいに行くことを頼み、そこに宮司が向かう車中から物語は始まります。「ダブル・トーラス」の持ち主は数学者・降脇一郎、そこに集まるのは、数学者・鰐山豊、その妻・鰐山明媚、大学講師・平国彦、その教え子・鳥居美香、十和田只人の5人。「ダブル・トーラス」の使用人、立林付と飯手真央と合わせた8人が事件の当事者となります。集まった夜に、降脇と鰐山豊が銃で殺され、その最重要容疑者として十和田が警察に連行されます。そんな状況で、十和田を犯人とは思えない宮司が真実を追うというストーリーです。
長編の割には、殺人事件は最初の二人だけで、あとは犯人は誰かを宮司が調べていくという形です。調べるほど、十和田以外に犯人はあり得ないということを裏付けるだけで、読者側も犯人をまったく想像できません。同じ情報から十和田は真実を簡単に理解するのですが、そのトリックと犯人はとても意外でした。しかしそのトリックは考えてみればそれほど複雑でなものではなく、そのヒントも、エレベーターや難解な会話の中にも隠されていたことを後で知ることになります。だからこそ、うまく考えられた作品だったと満足して面白かったと読み終えることができる作品でした。
「眼球堂の殺人」では、事件が解決した後に十和田と陸奥の会話で「ある事実」が明かされるのですが、「双孔堂の殺人」でも同じようなシーンが最後にあります。堂シリーズはもういいかと思っていたのですが、次はどういう形でまた登場するのかと興味がわく終わり方です。第3弾も読んでみようかなと思わせてくれます。
堂シリーズは、変な数学者小和田の個性として難しい数学や物理の話がよく出てきます。この作品でも、「ダブル・トーラス」という建物の秘密に絡めて、多様体だのポアンカレ予想だの結び目論とか次元による見方の変化とか、数学の難しい説明が数学者の会話として何度か出てきます。その内容はまったく理解不能で、正直読んでいると眠くなります。その難しい内容がこの物語に深く必要なわけではないので、言いたいポイントだけ理解して読み流せばいいのですが、そういうところだけがこのシリーズの難所です。

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。





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