小説「神様のレストランで待ち合わせ」

正月用に買った小説です。「ここは人生の最後にもう一度会いたい人と待ち合わせをするレストラン」「読み終わったあと、世界が少し愛おしくなる」というフレーズに興味を惹かれて購入しました。第7回文芸社文庫NEO小説大賞の大賞受賞作品です。

舞台は、人生の最後にもう一度会いたい人と待ち合わせをするレストラン。最後に会いたい人がやってくるまで、その人との思い出を胸に、相手も会いに来てくれるだろうかと期待と不安を持ちながら、いろんな時代のいろんな年齢の人が待ち続けます。7つの待ち人との話を描いているので、構成としては7編の短編となっていますが、話としてはレストランのウェイター・ワタルを中心にひとつの物語となっています。

#01「ママとパパはやくそくを守るひと」
   少女ハルカがお母さんとの約束を信じて母を待ち続ける健気なお話。
#02「好きだからもう会えない」
   自分に責任があったとお互いが思い、会うことを拒む恋人タクトとユイカの愛情のお話。
#03「金色の君が見上げる空」
   自分の命を奪ったかもしれない飼い主を待つゴールデン・レトリバーの切ないお話。
#04「無邪気に遊んだ日々を、もう一度」
   親友を待つ少年シンタロウと、クソみたいな人生だったというエンドウの友情のお話。
#05「愛とは相手の幸せを願うこと」
   結婚前に出征し命を落としたヒロシと、人生を全うした恋人サエの真の愛情のお話。
#06「一度くらい、あなたを待たせてみたくて」
   苦労させた妻を後悔し待つレストランシェフ・ミチオと、妻・スミレの夫婦愛のお話。
#07「また会うときは、僕を覚えていて」
   唯一の家族である姉を待つワタルと、記憶を無くしてやってきた姉との思いやりのお話。

レストランのある場所は、生きている時に悪いことをした悪人は来ることができない場所。成仏する前に会いたい人を待って会える場所です。なので、登場する人物はみんな優しくて思いやりのある素敵な人ばかり。そんな人々が織りなすとても泣ける小説でした。特に、#05「愛とは相手の幸せを願うこと」と#06「一度くらい、あなたを待たせてみたくて」は涙と鼻水でティッシュの山ができてしまいました。「愛とは相手の幸せを願うこと」は、ヒロシのサエが結婚して幸せになったことで嬉しくて涙したり、サエは夫とともにヒロシのことを忘れていなかったという優しい気持ちがたまりませんでした。戦争が絡んでいる悲劇というのも心打ちます。「一度くらい、あなたを待たせてみたくて」は、仕事一途で妻をいつも待たせていたミチオが、そんな自分に妻は会いに来てくれるだろうかと自分の行動を悔いながら期待している気持ちと、すでに会いに来て厨房にいるミチオにわからないようにミチオの料理を堪能していた妻・スミレの夫を待たせる仕返しの可愛らしさに、心がとても温かくなりました。他の物語も、優しさいっぱいで、「世界が少し愛おしくなる」という気持ちはとてもよくわかりました。ちょっと心に痛みを感じたのは、#03「金色の君が見上げる空」。飼い主がどれだけ非道な人間でも、飼い犬はその飼い主を慕って待ち続けるという切ないお話でした。私も良い飼い主ではなかったので、とても考えさせられました。

この小説を読むと、悪いことはしてはいけない、人には優しくしないといけない、本当の愛情とは何か、大切な人は誰なのか、そういうことを考えてしまいました。私は死後は無になるという考え方の人間でしたが、このような素敵な場所があると考えて生きるのも有りなのかなと思ってしまいました。そういう意味で「世界が少し愛おしくなる」ということなのかもしれません。それと合わせて「読み終わったあと、大切な人がより愛おしくなる」ということも私の感想として付け加えておくたいと思いました。

こんなに泣きながら読んだ小説は久しぶりでした。

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。

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