小説「Nのために」を読んで10年以上前のこのドラマを知ったので、配信をしていたFODで観てみました。
メインのストーリーは小説を忠実に描かれていますが、小説では曖昧だった各人が話をする理由、小説では描かれていなかった成瀬慎司(窪田正孝)の学生時代の話、成瀬の実家の火事の真実、杉下希美(榮倉奈々)の病気の話などが詳しく描写されています。そのために、小説では物足りないと感じた結末などを含めて、ドラマのほうがテーマや感動が明確に伝わってきました。小説は映画化すると省略されてしまう部分があってテーマが薄まるケースが多いですが、このドラマの場合は、あの小説から、こんな広がりと奥行きのある感動的な話に仕上げられるのかという驚きを感じて、この作品の脚本家というのはすごいと感じました。小説では最初に騙されたと感じる安藤望(賀来賢人)の性別の勘違いは、ドラマでも成瀬の勘違いということでさりげなく織り込まれていたりして、細部までオリジナルの小説を尊重したうえでの加筆だということにも好感を持てました。小説には登場しない高野夫婦(三浦友和、原日出子)の存在も違和感なく、むしろ登場するのが必然で、この夫婦がいてこそすべての話がうまくつながる重要な役割で、妻の夏恵が出なかった声を出しながら泣くシーンは感動的でした。すべての登場人物を大切に描いていて、希美の母(山本未來)との関係や西崎の父親(神崎孝一郎)との関係も含めて皆がいい方向に生きていくのではと思わせてくれる幸せな結びで終わるのも良かったです。
正直なところ、小説では人物像やNに対する思いが明確に見えずに、あまり感情移入できなくて感動は感じませんでした。しかし、このドラマでは各人の大切なNに対する思いや優しさが心に強く伝わってきて、感動で涙を流してしまいました。私が小説から読み取る力が無いだけかもしれませんが、この作品に関しては、ドラマの出来が小説を凌ぐ素晴らしい出来だったように思いました。小説を読んだことにより、10年以上経ってからこのドラマを観る機会を得たことがとても良かったと思いました。とても素晴らしいドラマでした。
なお、このドラマは、榮倉奈々と賀来賢人が夫婦になるきっかけとなったドラマだそうです。

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。


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