映画「少年と犬」

【あらすじ】
震災で失職した中垣和正(高橋文哉)は、飼い主を失った犬の多聞と出会い、家族のように暮らし始める。しかし、多聞は常に西の方角を気にしていた。ある日、沼口(伊藤健太郎)の頼みにより窃盗の片棒を担ぐ危険な仕事に手を染めた和正は事件に巻き込まれ、混乱の中で窃盗団の一人だったアーヤに連れていかれて多聞は姿を消す。数年後、多聞は兵庫で須貝美羽(西野七瀬)という女性と山で出会い、一緒に暮らしていた。美羽のSNSに多聞の姿を見つけた和正は美羽の住む滋賀に向かう。そこで和正と美羽は多聞を通して親しくなるが、多聞はそこでも西の方角を気にしていた。ふたりはそんな多聞の気持を察し、多聞と一緒に西に向かおうとする。しかし、そんな時に山中で埋められた死体が発見されて、美羽は和正に秘密を打ち明ける・・・

【感想】
西野七瀬は気になっている俳優さんなのと、泣ける映画と聞いていたので猫好きの私ではありますが、観に行ってきました。

「少年と犬」というタイトルなのですが、そのタイトルと和正や美羽が結びつかないので、この映画のテーマはどこにあるのだろうかと探りながら観てしまっていました。タイトルから見ると、多聞は主役であることは当然で、和正や美羽は脇役でしかありません。しかし、物語の中心は間違いなく和正と美羽なのです。傷つき道を誤ったり失敗したりのふたりが、多聞と出会ったことにより救われて、前向きに生きることを考えていく、それがメインテーマだと思いました。しかしそれに加えて、多聞が西の方角を気にして誰かを捜し続けているという、もうひとつの多聞中心のテーマが加わります。それがタイトルになっており、多聞がもうひとつの震災で傷ついた人たちの助けとなるというものです。

震災で傷ついた人と犬かというとそうでもなく、美羽は震災とは関係ありません。和正もまさかの運命で、最後まで多聞と実際に行動し手助けしたということでもありません。2025年に、バスで出会った女の子にこの話をするということで進む展開も、美羽の夢(焼肉と宇宙に行く)と重ねただけで、わかり難くなっているような気もしました。そんなところも気になる映画でした。

泣ける映画と思って覚悟をしていきましたが、最後まで号泣するような展開はありませんでした。終盤に多聞と光が出会うシーンとか、ホロっとするシーンはいくつかありましたが、こういうシーンは一般的にホロっと来るよなという感じのものでした。

震災やその他の理由で一度人生に失敗しても、寄り添ってくれる人や動物がいることでやり直せる、というメッセージは感じましたが、いろいろと盛り込みすぎなのと、描く年代がコロコロ変わることで、感情移入のしにくい映画でした。高橋文哉と西野七瀬の魅力は感じましたので、そういう目的ならば鑑賞お勧めです。

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。

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