映画「片思い世界」

【あらすじ】
美咲(広瀬すず)、優花(杉咲花)、さくら(清原果耶)の三人は、東京の片隅にある古い一軒家で一緒に暮らしている。家族でも同級生でもない彼女たちは、他愛のない会話で日常を過ごし、それぞれ仕事や学校へ出かけて行って、帰ったら一緒に晩御飯を食べる。お互いを思いながら穏やかに過ごす、楽しく気ままな三人だけの日々。そんな生活はすでに12年続いている。美咲にはバスで見かけるだけの気になる人がいて、そのことに気づいた二人は思いを伝えるように背中を押すが、美咲は無理なことは言わないでと寂しく言う。強い絆で結ばれている彼女たちは、それぞれが届きそうで届かない”片思い”を抱えていたのだ・・・

【感想】
広瀬すず、杉咲花、清原果耶のトリプル主演というところに惹かれて観てきました。「片思い世界」というタイトルから、泣ける切ない恋愛映画だろうなと思って観始めましたが、見事に良い意味で裏切られました。そんな平凡な話ではなく、健気で切なくて悲しい”片思い”の映画でした。世界と世界の片思い、一方通行でしかない片思い、とても想像できなかった、とても心に響く良い映画でした。

冒頭から、さくらが落とし物を拾ってあげなかったり、三人がバスに乗ろうとして乗り遅れたのに運転手は扉を開けないとか、道で人にはじかれて倒れても何も言わなかったり、コンサートの演奏中に大きな声でおしゃべりするし、なんかこの人たち変な人たちなのかと思うシーンが続きます。しかし、その理由が明らかになると、そのおかしな行動や人の反応がすべて納得できて、楽しく暮らす彼女たちの裏にある切なく悲しい秘密に心揺さぶられます。

三人が車に閉じ込められた子供を救おうとするシーン、バスで美咲が典真に話しかけるシーン、優花が母の再婚を知り家でその様子を知るシーン、優花の母が増崎に対峙するシーン、ハンカチに優花の好きだった形のクッキーを母が持っていたのを見つけたシーン、音楽室で美咲と典真が戯曲を通じて会話するシーン、合唱コンクールで三人が歌うシーン、など心に響く感動的なシーンが続きます。自然と目が潤んできました。この”片思い世界”は絶望的な環境なのに、力を合わせて明るく生きる三人はとても素敵な三人でした。

広瀬すず、杉咲花、清原果耶、そして横浜流星、みんなとても良かったです。パンフレットもキャストやスタッフのこの映画への思いが丁寧に書かれていて、とても読みごたえがあって意気込みの伝わるものでした。

なお、そのパンフレットによると、撮影中に監督やカメラマンが事故に遭って半年ほど撮影がストップしたそうです。それでも、キャスト、スタッフが撮影スケジュールを調整して、一体感を持って最後まで仕上げたそうです。そんな思い入れも十分感じる映画でした。

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。

コメント