小説「黒猫館の殺人」

綾辻行人の「館」シリーズの第6作目となる作品です。この作品は「新装改訂版」という形でオリジナルの作品を文章面で手を入れた作品の最後となります。

この作品も面白くて引き込まれて行く作品でした。舞台は中村青司が設計した「黒猫館」。「時計館」で起きていた大量殺人事件と同時期に「黒猫館」で起きていた殺人事件の話となります。時間軸の舞台はその1年後となります。鮎田冬馬という人物がホテルの火災により記憶喪失になり、1年前に黒猫館で起きた出来事を鮎田が書いたと思われる手記を手掛かりに、ミステリー小説作家の鹿谷門実と鹿谷の担当編集者となっている江南孝明が、自分が誰であるかを調査してほしいという鮎田の依頼によって、事件の真相に迫っていくという構成となっています。

物語は、その鮎田の手記で1年前の事件を語っている章と、現在の鹿谷と江南の調査の状況の章が交互に描かれて行きます。このあたりの構成は、「館」シリーズならではの場所や時間軸の違いによる並行展開となっていて、そこに読者を騙す仕掛けが隠されています。

この作品は、最初から多少の違和感を感じる仕掛け(伏線)が多々あります。会話の内容の意味がよくわからなかったり、会話の不自然さがあります。しかし、だからといって、最後の真実が予想できるかというとまったくそうではありませんでした。真実がわかればこんなに多くの伏線があったのかと思えますが、それを知らずに読んでいると、それが伏線だとはわからず違和感だけにとどまり、途中で真実がわかるということはありませんでした。わざと伏線を多くして見破られるならば見破ってみなさいという自信みたいなものを感じます。

真実がわかって読むと、不自然に感じた伏線群は明らかに自然なことで納得できます。伏線張り巡らせすぎだろうと思いますが、それで気づかない私は鈍感なのかなと落ち込んでしまいそうです。黒猫館における会話の不自然さとトリック、元の持ち主である天羽の全内蔵逆位症だったというヒント、鮎田と天羽の名前の関連性、巧みに隠されていながらも、あまりにも大胆な記述、すべてしてやられました。そういう面では、良い意味でちょっと異質な「館」シリーズの作品だったかなと思います。

詳しい感想や書籍情報に興味のある場合は下記ホームページをご覧ください。

定年後男の趣味三昧/小説/黒猫館の殺人

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。

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