映画「ミステリと言う勿れ」

この映画は映画館で観ようかどうか迷った作品です。テレビドラマも観ていなかったので、主人公がどんなキャラクターなのかわからなくて観ようとまで思わず、結局映画館での鑑賞は見送ってしまいました。

今回、DVDで観ましたが、映画館で観ても良かったと思わせてくれるほど良かったです。ストーリーはコミックの広島編と言われるものが原作となっています。広島の狩集家の遺産相に絡んで死者が出るので、その相続対象者である高校生の汐路からボディガードのアルバイトを無理やりに頼まれて、整が広島で活躍するという話です。横溝正史の作品のような閉鎖環境での事件の様相ですが、整のキャラクターによって陰湿な雰囲気はまったくなくて、面白おかしく観ることができます。久能整というキャラクターは初めて見ましたが、変人ではあるものの、頭の回転は早く注意力も優れていて、性格も優しくて説得力があり嫌みなくとても好感の持てるいいキャラクターでした。

謎解きの面白さを楽しめる映画でしたが、それだけではなくて私の心を打つシーンがふたつありました。

ひとつは幼い子供にスパイのようなことをさせようとする大人に整は、「そういうことやっちゃダメです。子供って乾く前のセメントみたいなんですって。落としたものの形がそのままあとになって残るんですよ。だから子供をスパイにしちゃダメです。一生悔やむことになる。」というシーン。子どもだからわからないだろうと大人の都合でいろんなことをさせることは子供の心を傷つけることになるのだと話します。自分がこういう考え方を常に持っていたかと振り返れば、自分勝手だったかもしれないと反省が膨らみます。たぶん私は子どもの心の乾く前のセメントにいろんな物を落としたのだろうなと思います。

ふたつめは、ラストで心傷つきながらも気丈にふるまう汐路に対して、「人間は弱いもので傷つくのが当たり前。恥ずかしいことではない。まだ若いのだからセメントはまだ修復できる。」(正確な台詞は下記※)と静かにカウンセリングを受けるように諭すシーン。この言葉はいろんな意味でとても優しく響き、涙が溢れてしまいました。

謎解きの面白さだけではなく、整の味のあるキャラクター、奥深いメッセージなど、とても楽しめて感動する映画でした。菅田将暉は素晴らしい俳優だということも再認識しました。

※台詞
「ぼくはアメリカの刑事ドラマをよく観るのですが、刑事が犯人を殺したり、逆にひどい目にあったりした時、必ずカウンセリングを受けさせられて、カウンセラーのOKが出ないと仕事に復帰できないのです。それはたぶん、人の弱さを認めているからだと思うんです。人は弱くて壊れやすくて、病むことも倒れることもある。それが当たり前だと。だから修復する。治そうと思う。それができると信じている。翻って日本では弱さを認めない。弱いものは負けで壊れないのが正しい。壊れたら退場で悩むことすら恥ずかしい。相変わらず根性論です。弱くて当たり前だと誰もが思えたらいい。」
「(汐路さんは)セメントに落とされたものがおそらくたくさんある。でも、あなたはまだ子供だから、セメントが固まりきってないから、きっと少し穴を埋めることができると思います。」

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。

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