映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」

ちょっと気になる内容の映画だったので、映画6回鑑賞でもらえる無料クーポンを使ってひとりで観てきました。

宮城県の港町で暮らす五十嵐家の耳の不自由な夫婦に大と名付けられた男の子が誕生したところから始まります。大が幼い頃は、耳の不自由な両親の通訳をし、そのことになんの戸惑いもなかったのですが、友人や町の人の差別のような特別視に触れていくにつれ、両親に対する戸惑いや苛立ちを持つようになり、母親に「こんな家に生れてきたくなかった」と言ってしまいます。そんな立場から逃れたくて東京に行くのですが、そこで、いろんな人と触れ合うことで自分を見つめ直すというストーリーです。

ストーリー的には大の感情の変化と成長、親の子どもに対する愛情をしっかりと感じることができるいい映画だったと思います。ストーリーの流れやシーンの切り替えはテンポ良く進んでいきます。大の母親に対する感情の変化のきっかけとなる出来事も、冗長にならずにうまく表現されていて、大の感情変化を違和感なく受け入れることができます。また、大の小学生役の子の目が吉沢亮とよく似ていたのがびっくりで、それが大という息子の年代による演者の違いの違和感を完全に無くしていました。母親役の忍足亜希子も、耳は聞こえずとも息子を愛する優しい母親をとても素敵に演じていました。

そういう映画だったのですが、私は思ったよりも感情を揺さぶられることなく終わってしまったという感じです。涙もろい私が一粒の涙も流れませんでした。大の「コーダ」という境遇の辛さや苦悩はよくわかりますし、親に対する感謝と愛情に気づく感動もわかります。一番心を揺さぶられたのは、大の東京に行く時の回想の中で、母が「人がたくさんいるのに手話で話をしてくれてありがとう。お母さん嬉しかった」と大に言って、それに対して大が母親の今までの感情を思いやって泣いてしまうというシーンでした。感動的なシーンでしたが、東京に行く時に大は母親の気持を理解し思いやっていたのかと思うと、東京でのいろんな行動や体験による成長の前後関係や意味に疑問符が出てきてしまい、感情移入できなかったのが泣けない理由だったように思います。感動的なシーンは過去ではなく今であってほしかったです。

私が細かい部分にこだわってしまい感情移入できずに感動が薄かったというだけで、テーマや描いている内容はとても味わい深い映画でした。

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。

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