映画「室井慎次 敗れざる者/室井慎次 生き続ける者」

この映画を公開前から観ようと思って、過去の「踊る大捜査線」シリーズの映画を公開順に観たりしていたのですが、新しい作品になるほど面白さを感じなくなったし、「容疑者 室井慎次」は雰囲気が異なって面白くなかったし、口コミもあまり芳しくなかったので、今回の映画を観る意欲がだんだんと低くなってしまっていました。しかし、「敗れざる者」(前編)と「生き続ける者」(後編)が15分の合間で連続で観ることのできる上映時間があり、観てがっかりするならそれでもいいと思って、長女を誘って観てきました。

青島との約束を果たせなかったことから、警察を早期退職し東北の地で里親として、事件により身寄りがなくなった子供を育てている室井の物語です。室井の家の近くで遺体が発見されるという事件が起き、その事件がレインボーブリッジの事件の犯人と関係があるということが並行して描かれますが、これはこの映画のメインではなく、室井の事件の被害者や犯罪者の家族への思いを際立たせるための伏線でしかありません。つまり、この映画は、今までの「踊る大捜査線」シリーズの映画のような犯罪サスペンスではなく、心に訴えるヒューマンドラマでした。いい意味で期待を裏切られて、私としては泣けて親と子の関係はどうあるべきかということを考えさせてくれる映画でした。「踊る大捜査線」シリーズの続編として観に来た人はたぶん退屈でがっかりすると思います。この映画は、ところどころ「踊る大捜査線」ファンを楽しませる演出はあるものの、「踊る大捜査線」シリーズとはまったく別物であり、「踊る大捜査線」シリーズを楽しむ客層とは異なる映画だと思いました。

青島との約束を果たせず挫折した室井が、自分にできることは何かを考えて事件により傷つき孤独になった子供の里親になり、どうすればそんな子供たちを癒やせ、独り立ちさせられるかを悩みながら親となっていく姿と、家族を奪った犯人や犯罪を犯した親とのかかわりに悩む子供たちの姿を描いているのが、この映画のテーマです。前編、後編ともに、そこがとても繊細に詳しく丁寧に描かれています。何があっても子供に寄り添い、子供を信じて静かに見守る室井の姿は感動ですらあります。実際の子供の親としては、参考になるところが多かったですし、反省することも多かったです。悪いことをしても、本人が気づくまで根気よく待つだとか、怒らないとか、子供は(特に女の子)は親に優しくしてほしいと思っているとか、親の正しいと思うことは子供にとって正しいとは限らないとか、不登校でも何も言わないとか、随所に子供の育て方ではっとさせられるシーンがありました。子供たちや犬の演技も、室井の存在感に負けずにとても心情が伝わってきて、とても良かったです。室井が里親だからこそと思わせてくれるいい子たちでした。実際はそんなに簡単なことではないでしょうけど、この映画は子供たちをそう描くことで、室井の優しさや正しさを引き立てていたと思います。こうあればいいなぁという理想だと思います。

前編後編合わせて230分の映画ですが、私は通しで観てもまったく退屈せずに、室井と子供たち、周辺の人々の関係と会話にハマってしまいました。忘れてしまった台詞もありますので、配信されたらじっくりと見直してみたいと思います。娘も、この映画で泣くとは思わなかったと言っていましたし、私も同じことを思った予想外の良い映画でした。

上記はあくまで私の主観です。あとで自分がその時にどう思ったかを忘れないための記録であり、作品の評価ではありません。また、ネタバレの記述もありますのでご注意ください。

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